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印鑑証明が取得できない~外国法人と自動車登録~
自動車登録で困ることの一つは、印鑑証明書を取得できないということです。
今回は、印鑑証明が取得できないケースのうちの一つ、外国法人について解説したいと思います。
外国法人と印鑑証明
外国にある法人が自動車登録をしようとした場合、日本で登記をしていなければ、日本の印鑑証明を提出することができません。
自動車の所有者になるためには、原則として印鑑証明書で本人の意思を印鑑証明で確認します。
印鑑証明が出せない場合は、他の方法によって意思確認をする必要があります。
日本で登記して印鑑証明書を取得する場合
会社法では、外国会社が日本において取引を継続する場合は、日本における代表者をさだめるように規定しています。(会社法817条)
代表者を決めたら継続的な取引を始める前に外国会社の日本における代表者を登記します。登記が完了した場合は、印鑑証明書が発行されるので、そちらを使って自動車登録が可能です。
継続的な取引がなく、自動車を所有できるのかという問題はありますが、外国法人に一回だけ贈与するということも論理的には成り立ちうるので、登記をしていない場合でも印鑑証明書に変わる書類があれば自動車登録をしてよい事になっています。
質問
外国法人が所有者となる揚合の取り扱いはどのようにすればよいか。
会社法817、818条では、日本における代表者を定めて登記をしなければ日本での取引きができないこととされているが、日本での登記がない法人でも名義人となれることでよいか。
回答
日本で印鑑証明を取れる場合について日本の法人の取り扱いと同じ。
(3-21) 日本で法人登記がされておらす印鑑証明が取得できない揚合にあっては実施要領「1-i(1)}’f⑥」のとおり。
※いずれの揚合にあっても所有者の住所は本国における住所で登録する。
引用元:自動車登録業務等実施要領 質疑応答集 平成29年4月【3-21】
日本に登記のない外国法人の提出書類
外国法人で印鑑証明書が発行できない場合には下記のいずれか書類が必要です。
本国法に準拠して成立し法人格を有していること、法人を代表する権限を有するもの及びその者のサインについて、当該外国の官憲が証明した書面
日本における領事等が当該商事会社は本国において法人格を有する旨及び日本における代表者である旨を認証した書面と日本における代表者のサイン証明書
また、上記の添付書類が、外国語により作成されている場合は、必要に応じて翻訳した者が氏名及び住所を記載した訳文を添付する必要もあります。(2020年12月改正により押印が不要となりました。
引用元:自動車登録業務等実施要領 (国土交通省のページ)
外国の官憲が証明した書類とは
1の外国の官憲が証明した書類を提出する場合は、外国の代表者が、外国で証明してもらい、その書類を日本に送付する形になります。
証明内容は下記の3つです。
その外国法人が法人格を有していること
日本でも法人格を有さない集団があります。町内会や、学校のOB会などは集団ではあっても、法人格を有しません。
自動車登録をしたいという外国法人が、ただの集団ではなく、法人であることを公の機関で証明してもらいます。
サインした人がその法人の代表者であること
サインの証明をもらうにあたり、サインはその法人の代表者が行うこととなりますが、サインをした人がその国の代表者であることを証明する必要があります。
証明方法は、国によって異なりますが、外国の法人なので、証明方法は外国法人の代表者の方がご存知と思われます。
サインの証明
サイン証明は、サインの形だけを証明するものではなく譲渡証明書や委任状について公証人の面前で署名を行い、それを証明してもらうものが望ましいとされています。
国によってルールも違うので、サインだけの証明書であっても受理されないわけではないですが、サインの同一性の判断はなかなか難しいので、内容をすべて埋めた委任状や譲渡証明書を作成し、押印欄に公証人の前でサインする方法をとることが推奨されます。
日本における領事館の証明
日本における代表者が、在日外国領事館で証明書を取得します。証明内容は、外国で証明する場合と同様に、法人格があること、代表であること、代表者のサインです。
領事館での発行の場合は、外国での代表者ではなく、日本における代表者のサインでいいということに注意が必要です。
外国の印鑑証明書が取得できる場合
海外でも印鑑文化があり、印鑑証明書が発行される場合は、外国の印鑑証明書を添付することが可能です。
台湾では印鑑証明書が発行されるので、台湾の実印を印鑑証明書や譲渡証明書に押印し、印鑑証明書に翻訳文をつけて提出します。
韓国では印鑑証明書の5年以内の廃止を2009年に表明していますが、少なくとも数年前は印鑑証明書が発行されました。現在も領事館で印鑑証明書が発行されているので、まだ廃止されていない可能性が高いです。
自動車登録申請書の添付書類の有効期間を延長
国土交通省より、新型コロナウイルスの影響により、自動車登録申請書の添付書類の有効期間を延長する発表がありました。国交省のHPより引用します。
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、自動車登録申請等を予定通り実施できないまま、添付書類の有効期間が満了してしまうおそれがあることから、添付書類の再発行に伴う申請人の方や発行官署の負担を軽減するため、添付書類の有効期間を延長する取扱いを実施いたします。
詳細についきましては下記、国土交通省ホームページをご覧ください。
自動車登録申請書の添付書類の有効期間を延長します
~新型コロナウイルス感染症対策~
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha06_hh_000108.html
支配人による自動車登録
株式会社には、法律的に「支配人」と呼ばれる役職の人がいるケースがあります。
支配人とは何か
法律上の株式会社の支配人の権限は、
(支配人の代理権)第十一条 支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。2 支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。
3 支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
支配人の印鑑証明書提出時の注意点
(f)所有者の印鑑(登録)証明書
① 発行されてから3ヶ月以内のもの
② 申請人(所有者)が支配人による申請の場合は本社の所在証明として商業登記簿謄(抄)本又は登記事項証明書を添付
引用元:自動車登録業務等実施要領 I 1-1(1)(f)
登記事項証明書の添付が不要な場合
支配人の印鑑証明書を提出しない場合は、登記事項証明書は不要です。新規登録前の権限の移動を証明する譲渡証明書に支配人の名前があったとしても、そもそも印鑑証明書を添付したいので、登記事項証明書は提出する必要がありません。
(d)譲渡証明書(所有者の変更がある場合に限り必要)
① 譲渡人は実印を押印
② 譲渡人が支配人・清算人等であっても資格証明書は不要
引用元:自動車登録業務棟実施要領 I 1-1(1)(d)
OSSと印鑑証明書等の有効期限
自動車登録において、印鑑証明書の有効期限は、発行後3ヶ月です。
基本的には、3ヶ月後の同じ日付までとなります。詳しくはこちらを御覧ください。
下取りのケースで、車庫証明の申請を忘れていて、印鑑証明書の期限が後1日になってしまったら、紙の申請では当然印鑑証明書の再取得が必要となります。
場合によっては、やむなく移転抹消することもあるかもしれません。
さて、そんなケースを救済する裏技があります。
【自動車登録で印鑑証明書が切れそうなときの裏技】
電子申請と書面申請では、印鑑証明書の提出のタイミング異なります。
紙申請の場合
- 車庫証明の申請
- 車庫証明の受け取り
- 登録申請(印鑑証明提出) 税申告
電子申請(OSS)の場合
- 申請データ送信
- 受付審査(印鑑証明提出)
- 車庫審査
- 車庫審査完了
- 登録審査
- 税審査
- 車検証(車庫ステッカー)受け取り
紙申請の場合は、車庫証明の審査が完了してから印鑑証明の提出となります。
通常は中2日程度かかりますから、印鑑証明が明日までであれば、その時点でアウトです。
電子申請の場合は、申請データ送信の当日に受付審査をすること可能です。印鑑証明書の期限は、2の受付審査を基準とするので、
5の登録審査時に印鑑証明書が切れていても、登録をすることが可能です。
「印鑑証明が今日までだけど、車庫とってない。」そんなケースで電子申請(OSS)が活躍します。
※残念ながら全てのケース、すべての地域でOSSができるわけではないので、
興味のある方はお問い合わせください。
自動車登録と印鑑証明書の有効期限
印鑑証明書の有効期限
印鑑証明書には、有効期限はありません。
相手側が認める限りどのような時期のものでも有効になります。
例えば遺産分割協議を使って不動産登記の申請をする場合は、遺産分割協議書には実印を押印して、印鑑証明書を添付する必要がありますが、その印鑑証明書と遺産分割協議書が10年前のものであっても、何の問題もありません。
もちろん、実際には3ヶ月以内のものを提出するように求められることは多いですので、印鑑証明の期限に制限はなく、いつのものでもいいというケースもあると理解しておけばいいと思います。
自動車登録と印鑑証明書の有効期限
自動車登録で申請書に添付する申請者の印鑑証明書の有効期限は3ヶ月となっています。
3ヶ月の数え方は、民法の原則に従って初日を参入しないので、翌日の応当日の前日までとなります。
1月15日発行の場合は、翌日の1月16日から起算して、3ヶ月後の応当日の4月16日の前日の4月15日までです。
多くの場合は、3ヶ月後の同じ日付となりますが、発行日が月末の場合は、期限は月末となります。
うるう年でなければ2月28日発行の印鑑証明書は、5月31まで使用することができます。
期限の日が、閉庁日の場合は、開庁日まで伸ばされます。
9月29日発行の印鑑証明書は、1月4日(土日であれば次の月曜日)まで使用することができます。
自動車の印鑑証明の期限に関することは以下の通りです。
- 印鑑証明の期限は3か月
- 発行日が月末の印鑑証明は3か月後の月末
- 期限が閉庁日の場合は開庁日まで使用可能
参考条文
民法
(期間の計算の通則)
第138条 期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う。
(期間の起算)
第139条 時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。
第140条 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
(期間の満了)
第141条 前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。
第142条 期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律 (昭和23年法律第178号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。
(暦による期間の計算)
第143条 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。
自動車登録令
(印鑑に関する証明書の添付)
第16条 申請書には、やむを得ない場合を除き、申請人及びその第三者(第14条第1項第2号の書面を提出する場合に限る。)の印鑑に関する証明書(住所地の市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第252条の19第1項の指定都市にあつては、市長又は区長若しくは総合区長とする。)又は登記官が作成するものに限る。以下この条において同じ。)を添付しなければならない。ただし、自動車の変更登録又は更正の登録の申請書にあつては申請人の、抹消した登録の回復又は抵当権の登録の申請書にあつては登録権利者である申請人の印鑑に関する証明書を添付しなくてもよい。
2 前項の規定は、申請人又はその第三者が国又は地方公共団体である場合には、適用しない。
3 第1項の印鑑に関する証明書は、作成後3月以内のものでなければならない。