自動車販売店のための改正行政書士法についての考察

行政書士法が改正され2026年1月から施行されます。
このページでは、
①自動車販売店にとって重要な変更点について
②日行連の声明から読み取る趣旨
③行政書士法違反について事例別の判断
の順で解説します。
自動車販売店にとって重要な変更点の整理
業務の制限規定(報酬を得て他人の行政手続書類を作成する行為)の趣旨が明確化
報酬を受けて書類作成を行う行為は「行政書士又は行政書士法人」でない者にはできないということが、より明確に法律上示されます。条文に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が追加されたので、書類作成料を無料としていても、他の名目で報酬を得ている場合は行政書士法に違反することが明示されました。
両罰規定の整備
行政書士法人等において義務を違反した場合、法人に対しての罰則が明文化されます。つまり、従業員がやったことでも会社が罰せられる可能性があるので、より社内のコンプライアンスに気を配る必要性が発生しています。
日行連の声明から読み取る趣旨
この改正に対して日本行政書士会連合会は以下の声明を出しています。
日本行政書士会連合会 会長の声明(抜粋)
改正法により法第19条第1項の行政書士又は行政書士法人でない者による業務の制限規定に、「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」の文言が加えられました。
この改正は、コロナ禍において、行政書士又は行政書士法人でない者が給付金等の代理申請を行い、多額の報酬を受け取っていた事例が散見されたことから、「会費」、「手数料」、「コンサルタント料」、「商品代金」等のどのような名目であっても、対価を受領し、業として官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類、実地調査に基づく図面類を作成することは、法第19条第1項に違反することが明確化されたもので、これらは現行法においても変わりはなく、改正法の施行日前であってもこうした行為があれば同条に違反することになります。
次に、改正法により法第23条の3の両罰規定に、行政書士又は行政書士法人でない者による法第19条第1項の業務の制限違反に対する罰則が加えられ、違反行為者が罰せられることはもとより、その者が所属する法人に対しても百万円以下の罰金刑が科せられることとされました。
つまり、元々、禁止されていたが、条文上明確でなかったため見過ごされていた部分を、条文上明確に違反とわかるようにすることで行政書士法違反を防止しようという法改正であり、何か新しくできなくなったことがあるわけではないということです。ただ、法人の責任は明確に加重されているので注意が必要です。また、法改正の背景にはコロナ禍の助成金等について、無資格のコンサルタントによる申請が多かったことが挙げられます。
自動車検査登録関係の手続きについては、行政書士法違反とされるような行為が、法解釈の誤解の元、幅広く行われていたと思いますので、何が行政書士法違反になるか、どこまでならば行っても良いのか列挙していきたいと思います。
行政書士法違反に該当しない業務(公的なアナウンスあり)
すでに完成している書類の提出や、受領といった代行業務
あくまで行政書士が独占しているのは書類作成業務なので、単に代行する行為は、行政書士法違反にはなりません。しかし、日付の記入や、車台番号の追記、記入漏れの対応など、書類作成の必要性が生じることはよくあります。一文字でも記入・修正・補記をすると、書類作成と評価される可能性があるという前提をしっかりと理解する必要があります。
継続車検や登録申請の書類を行政書士に作成してもらい、それを何ら追記せずに提出する行為は問題ありません。
また、OSS申請したものについて車検証を受け取る行為も書類作成がないので問題ありません。
書類作成を行政書士に依頼して、登録代行や添付書類の収集補助などの関連業務を有償で行う行為
書類作成をしていない場合は、付随業務について、代金を請求しても行政書士法違反には該当しません。
親族や友人などの登録申請で印紙代などの実費のみ受け取って書類作成申請代行する行為
純粋に実費分(登録印紙代、車庫証明の都道府県に払う手数料等)のみを請求して、他に経済的な関係がない場合は、報酬を受け取ったことには該当しません。
地図等の添付書面をスキャンして送信する行為
OSS申請が始まった当初警察庁からの通達で、車庫証明に必要な完成済みの添付書面を単にスキャンして送信する行為は、書類作成には該当しないと明確にされています。
参考 国土交通省 行政書士法違反となる事例等
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001747440.pdf
警察庁 自動車保有関係手続のワンストップサービス(OSS)の運用に関する細目について(通達)
https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/kisei/kisei20200323.pdf
法の構造上、行政書士法違反に該当しないと整理できる行為
車庫証明の本人申請
行政書士法は、「他人の依頼を受け」書類作成する行為を規制しているので、自社所有にするための商品車登録(所有者および使用者がディーラー)の際に、ディーラー名義で車庫証明の申請書を作成し、申請する行為は、営業行為の一環として行っていても全く問題ありません。
自社名義のデモカーの本人申請
自社名義のデモカー(所有者使用者同一)については、報酬が発生することもないですし、自己のための申請なので行政書士法違反になりません。
必要書類について案内する行為
必要書類や記入方法、手続きの流れなどを説明する行為は、行政書士の独占業務ではないので行政書士法違反には該当しません。
下取りした軽自動車を自社名義に変更する車検付き軽自動車の検査証記入申請の作成
自社名義に変更する軽自動車の申請は、新使用者の単独申請であり、軽自動車税に関する申請は所有者の単独申請です。したがって、申請に売り主は関与する要素がないので「他人の依頼を受け」と評価される可能性は考えられません。
過去に旧所有者の申請依頼書やOCRシートへの押印をする運用がありましたが、あれは譲渡証明書の代わりに便宜的に用いられていたもので、旧所有者が申請者であったわけではありません。
行政書士法に違反することが明白な行為
納車費用の名目で報酬を得ているが、書類作成費用を0円として申請書類作成する行為
今回の改正でこういった行為が明確に禁止されました。
車両本体額のみの請求で、納車費用や書類作成費用を受け取らずに申請書類を作成する行為
仕事として金銭のやり取りが発生している以上、人件費をかけて書類作成する行為が無償で行われているとは解釈できないので、付随的な報酬ではなく、車両本体額という名目であっても、書類作成のための報酬だと判断されます。
何らかの名目で報酬を得ている状態で自動車税の還付委任状を作成する行為
還付委任状についての受任者であっても、報酬を得て、書類を完成させる行為は行政書士法違反に該当します。
明確にできないと公的アナウンスされている行為
会費を徴収している会員に対して、無償で書類作成する行為
一定の金額をもらっていても、書類作成のサービスの提供の有無や量と会費が全くリンクしていなければ無償と判断されるのではないかという疑問に対しての国土交通省の回答は、有償の書類作成に当たる(行政書士法に違反する)でした。 ※1
何らかの名目で報酬を得て保管場所使用承諾証明書、所在図、配置図を作成する行為
これは新車新規OSSについて例外的に書類作成ができる自販連に対して、注意的に示された基準です。保管場所使用承諾証明書や所在図、配置図に不備があり、追記することも作成に含まれると思われますので、前面道路の幅などの追記をしないように注意が必要です。
山口事務所が違法と評価される可能性は極めて低いと考える行為
希望番号のWEB申し込み
希望番号は民間へ申し込むものであり、申込者は、使用者に限定されておりません。誰でも本人申請で他人のために希望番号を申請できます。したがって他人の依頼を受けて(他人名義の電子的)書類を作成しているとは評価されないと考えます。
また、国土交通省のチラシや、申込みのHPでもディーラーによる申し込みを当然と考えていると読み取れる部分があります。
実印の押印が必要な委任状に事前に車台番号や委任者の氏名住所を記入する行為
委任状には車両特定番号や車台番号を記入する必要がありますが、本人が何か記入する前に準備する行為は、民間では当たり前に行われています。(正当業務行為に付随する行為)
運用上、自動車登録の委任状は多くの場合は受任者が空欄の状態で流通しており、実態としては「ディーラーさんに誰に委任するかを白紙委任した委任状」であり、本来は復代理人の選任についての権限を付与した委任状をディーラー受任者として作成すべきところを便宜的に、受任者空欄の委任状の交付で簡易的な処理をしていると思われます。
その是非はともかく、販売業者としては完全な第三者として委任状の作成を有償で手伝っているのではなく、代理人選定の権限を持つある種の当事者の立場を持っていると考えるのが相当です。当事者であれば、書類について事前に準備して埋める行為は何ら問題ありません。したがって、実際に出頭する人間と自動車ユーザーの間に立つ販売店は、委任状の項目を事前に埋めたとしても業務上必要なことを行っているだけだと考えます。
なお、事前に埋めた書類について記入漏れがあったときに、それを追記する行為は、他人の書類を作成する行為なので業として関与している以上、行政書士法違反に該当すると思われます。あくまでも準備にとどめておくべきです。
自社が購入する車両について、売り主の発行する譲渡証明書に事前に必要情報を埋める行為
こちらについても、車の買い主の立場で、売り主が発行する証明書の事前準備をすることは業務上当然の行為であり、行政書士法違反には該当しないと考えられます。
もちろん、記入漏れがあった場合に追記する行為は、事前準備とは性質が異なるので、行政書士法違反に該当する可能性が高いです。
申請書作成に必要な情報を行政書士等に送信する行為
申請書の作成に必要な要素をすべて行政書士等に送信して、それを行政書士が加工し、申請書を作成したとしても、それをもって書類作成をしたとは判断されないと思われます。自販連OSSや継続車検のOSSは、必要情報を販売店や指定整備工場がほとんど提供しているので、これらの行為を行政書士法違反と判断することは、考えられないと思います。
山口事務所が違法と評価される可能性は低い考える行為
自社名変の申請で、共同申請の一当事者として申請書の作成をする行為
登録自動車の下取りをした場合、移転登録は旧所有者と新所有者の共同申請となります。この申請書の作成は新所有者たる販売店は自社の義務としてする必要があるので、売り主の申請書でもありますが、形式的に無償で作成すれば問題とならないと考えます。なお、税申告は新所有者(納税義務者)が申請人となるので、自社名変の場合はそちらも100%問題ありません。
ただし、共同申請は、旧所有者の申請という要素もあるので、他人の依頼を受けて書類作成をしたと判断される危険性があると主張される方もいることは留意していただけると幸いです。
なお、旧所有者の譲渡証明書や委任状の作成は、本人か行政書士以外が行う場合は、行政書士法違反と判断される可能性が高いのでご注意ください。
公になれば行政書士法違反と評価される可能性が高い行為
車庫証明の申請書等をすべて作成したうえで行政書士に最終確認と提出を任せる行為
行政書士法の趣旨としては、無資格者により作成された書類で、国民に不利益が生じることを防止するという目的が大きいと思います。その意味では、行政書士が確認しているのであり、報酬も行政書士に支払っているのであるから被害者はいないかもしれません。しかし、作成には人件費がかかっているはずですので、何らかの形でその人件費を回収するための費用が発生し、それを顧客が負担しているはずです。したがって、行政書士法違反と判断される可能性が否定できません。行政書士が作成者として記名押印した場合は、官公庁は実態の把握は出来ませんが、内部告発のリスクがあるので、作成は使用者本人か行政書士に任せることを推奨します。
継続車検の申請書等をすべて作成したうえで行政書士に最終確認と提出を任せる行為
継続車検の申請書、重量税納付書を作成したうえで、行政書士に何かあったときの加筆修正と申請代行を依頼するというケースは、かつて一般的でした。しかし、車庫証明同様に行政書士が書類の作成を肩代わりして申請代理を行ったとしても、何らかの形で報酬を得て書類作成した事実は変わりません。こちらも内部告発のリスクがあるので行政書士に依頼すべきと考えます。
営業マンが営業の一環として無償で増車申請と事業用連絡書の取得した場合
事業用トラックの販売価格は高額なので、サービスの一環として会社に報告しないで勝手に行政手続を個人的に代行するケースも耳にします。そういったサービスの有無が、納車費用や、車の販売価格に影響がなかったとしても、経済的な利益を得ている会社の従業員が、書類作成をすることはリスクが高いと考えられます。
解体用に買い取った車を旧所有者名義のままに永久抹消申請する場合に、無償で書類作成をする行為
形式的には全く報酬を支払っておらず、逆に車両代金を支払っていたとしても、総合的に見て手続きにかかった人件費等が、車両の買取金額に影響を与えており、実質的に申請書の作成行為により経済的利益を得ていると判断される可能性を否定できないので、行政書士に依頼すべきと考えます。
問い合わせについて
現状多数の問い合わせをいただいているので、一つの指標として山口事務所の考えを書かせていただきました。このページに対する電話での問い合わせは一切受け付けておりませんので、疑問がある方は問い合わせフォームをご活用ください。また、回答までにはお時間を要することもご了承ください。
補足
※1 有償無償の考え方で、運送事業法では、旅館などの送迎バスは、利用の有無によって宿泊費や提供するサービスに一切の差異を設けなければ無償と判断できるとしている。国土交通省の無料送迎バスについての無料の解釈と、総務省の書類作成無料の無料の解釈が異なることには注意が必要です。
行列ができる 改正行政書士法対策相談
さて、色々と私見を書かせていただきましたが、
弁護士などの意見も参考にしたい方もいらっしゃるかと思います。
そこで、私の所属する一般社団法人全国陸運機構とGスクラム共催の
討論形式のセミナーをご紹介します。
「どこからが違反になるのか」
「担当者個人も処罰対象になるのか」
「会社として、どんな体制を取るべきなのか」
こうした疑問に対し、本セミナーでは
改正行政書士法 × 刑事責任 × 企業コンプライアンスをテーマに、
若手弁護士4名による討論会形式で、実務目線から徹底的に掘り下げます。
SNSや内部告発が捜査に与える影響、
企業が罰金を科される具体的なケースなど、
「知らなかった」では済まされない論点を、事例を交えながら解説します。
行政手続を外部に委託している企業のご担当者様、
法務・総務・コンプライアンス部門の方、
そして制度改正への対応に不安を感じているすべての方にとって、
今、必ず押さえておくべき内容です。
開催概要
日時:2026年1月10日(土)
13:00 開場
討論会 13:30〜15:30
意見交換会 15:45〜17:00(予定)
会場:日比谷国際ビル コンファレンススクエア 8F
定員:200名(先着順)
参加費:1人10,000円(税込)
お申込みについて
ご参加希望の方は、2026年1月7日(水)までに下記のフォームから申込ください。
https://forms.gle/RYgSkWNCeyFJ8ERv9
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