【コラム】自動車OSSの利用率向上について【アクションプラン】
日々OSS申請している行政書士法人山口事務所の代表行政書士山口です。
今回は、国が進めるOSS利用率向上についてコメントしたいと思います。
目次
自動車OSSの現状と目標
オンライン目標は下記のとおりとなっています。
【目標】(目標にするオンライン利用率の定義も明記)
オンライン利用率 70% (自動車保有手続きの新規登録)
オンライン利用率 =(新車新規登録処理件数 + 中古車新規登録処理件数)/全申請件数(47 都道府県)
(登録処理には、「保管場所証明の申請」・「自動車税の申告納付手続」を含む)
オンライン利用率 20% (自動車保有手続きの中間登録(変更登録・移転登録・抹消登録))
オンライン利用率 =(変更登録・移転登録・抹消登録処理件数)/全申請件数(47 都道府県)
(登録処理には、「保管場所証明の申請」・「自動車税の申告納付手続」を含む場合がある)
分子:添付書類を紙で提出した申請を含む
分母:OSS 対象手続きとなっていない窓口申請を含む
【取組期間(達成期限)】 2026 年 3 月末
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/jouhouka/content/001399874.pdf
現状の新規申請の電子申請率は、29.3% 変更、移転、抹消登録は1.1%となっています。
現状と目標に対してのコメント
まず、現状の分析ができているかという問題があります。
新車新規の処理件数と中古新規の処理件数を合算して、現在29.3%だとして、
中古新規は何%なのか、中古新規は使いにくく、業界団体も申請代理人となれないので、かなり低い水準であると思われます。 変更や移転と同水準だと思われるので、数%であると考えられます。
すでに、60%を超える申請割合を達成したことのある新車新規登録と、ほとんど使用されていない中古新規を合算で目標を立てても意味がないように思います。
移転変更抹消登録についてですが、抹消登録は電子申請する意味が殆どありません。車庫証明が必要な移転登録や変更登録のケースでは便利と言える部分もありますが、車庫証明が不要な抹消登録は、不便で遅いだけなので利用価値はありません。移転登録、変更登録と比較して抹消登録は非常に低い水準であると思われます。これについてもまとめて目標を立てることには、違和感があると思います。
オンライン利用率を引き上げる上での課題と課題解決のためのアクションプラン①
課題
OSS 申請関連手続きの利便性の向上が必要である
中間 KPI
【目標・達成期限】
2025 年 12 月までに支局への出頭を30%削減する
【KPI の定義】
2020 年と 2025 年の年間出頭数を比較した削減率
アクションプラン a (引越OSSとの連携)
【取組内容】
引越ワンストップサービスとの連携を推進する地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が保有する「基本4情報」との連携等を通じて、申請者の情報入力の簡素化等を図る
【取組期限(期間)】
2023 年 3 月末(引越ポータルサイトとの連携については 2021 年 3 月)
アクションプランaについてのコメント
東京の感覚では、引っ越した個人が住所変更をしっかり行うという常識はないと考えます。それは、手続きが面倒というだけではなく、単純にやらなければならないことがあまり周知されていない上に、形式的に罰金という罰則があってもほとんど適用されてないからであること、住所変更をしないで、車検を通すことは法律違反で虚偽申請となるにも関わらず、その部分の周知や、申請時の確認をしていないことが 問題点として挙げられます。
継続OSSについてはかなり申請されていますが、一定以上の虚偽申請(住所変更されているのに、前住所での申請)が行われていることは明らかです。
まずは、引越し時の変更登録を徹底させる必要があると思います。そのうえで便利にしないと、便利にしたけれど誰も使わないということになると思います。
アクションプラン b (スマートフォンの活用)
【取組内容】
スマートフォンを活用してカードリーダを不要とするシステム改修を行う等、OSS ポータルサイトの使い やすさを向上させる
【取組期限(期間)】
2022 年 3 月
アクションプランbについてのコメント
一般人を取り込むにはスマホ利用はいいと思います。しかし、登録しない理由はスマホを使用できないからではないと思いますので、まずは登録させる仕組みが最重要だと思われます。
個人的には、車検証の記載を変更していなかったら、反則金を払う制度にすればいいと思います。現在は罰金刑ですが、罰金の場合は裁判が必要になります。したがって、交通違反のようにすぐに支払いを求められる反則金制度が有効だと考えます。導入すれば車検証を書き換える理由が増えるので、便利なOSSがそこで役に立つと思います。
アクションプランc (車検証電子化による出頭不要化)
【取組内容】
変更登録・移転登録の申請について車検証を電子化することにより運輸支局等への来訪を不要とする
【取組期限(期間)】
2023 年 1 月
アクションプランCについてのコメント
車検証の電子化会議の最終決定では、A6の紙にICタグを付けるという結論になったと思いますが、ICタグの書き換えをどこでするのかが問題です。民間に開放したとして、結局の所は、車検証の郵送が必要になってくると思います。継続車検と違い、整備のついでにできるわけではないので、具体的にどのようなイメージなのかが気になるところです。
車検証の原本という存在をなくして、クラウド上で管理するのであれば便利になると思いますが、ICで管理するのであれば、ものの移動はなくならないので、効果は限定的だと思います。
アクション プラン d (手数料等の決済の多様化)
【取組内容】
自動車検査登録等の手数料の納付や自動車諸税における決済手法の多様化を図る
【取組期限(期間)】
検討:2021 年 3 月 実施:2023 年 3 月
アクション プラン dへのコメント
決済方法の多様化の前に、北海道の車庫手数料の支払いが北洋銀行でしかできない現状を早急に改善してもらいたいと思います。クレジットカード決済は確かに便利ですし、PayPayなどもいいと思いますが、ゆうちょ銀行やメガバンクのネットバンキングで支払いが不可能な地域がある現場の改善を優先すべきだと思います。
アクション プラン e (車庫ステッカーの郵送)
【取組内容】
保管場所標章の郵送化により警察署への来訪を不要とする
【取組期限(期間)】
2023 年 3 月
アクション プラン eへのコメント
これは素晴らしいです。保管場所標章(車庫ステッカー)と本人控えの受領のために、警察署に出頭させるという現状は、非常に問題でした。新車新規の申請の大半は、業界団体が行っており、そこが一括して警察本部で受領していました。そこで小口の申請者である行政書士からの警察署に取りに行く手間がかかるので、郵送してほしいという意見や、標章発行を陸運支局等の窓口に委託してほしいという声は長年届きませんでした。 東京、埼玉、神奈川については、本部で一括交付を受けることすら行政書士には許されないという取り扱いがされてきました。
早急に郵送化は進めてもらいたいと思います。大量案件はともかく、個別案件で車庫があるものについては、OSSを選ぶ可能性が高まると思います。
アクション プラン f (利便性の向上)
【取組内容】
申請代理人が行う OSS 申請の利便性を向上させる
【取組期限(期間)】
検討:2021 年 3 月 実施:2026 年 3 月
アクション プラン fへのコメント
こちらも素晴らしい取り組みです。まだまだ未熟なシステムなので、大きく改善してほしいです。何をやるのかはよくわかりませんが、行政書士会としてもしっかりとした改善要望を出していってほしいと思います。
オンライン利用率を引き上げる上での課題と課題解決のためのアクションプラン②
課題
一部の手続き書類について電子化が進んでいないため、法人謄本等窓口での提出が別途必要となるものや、OSSの手続き対象となっていないものがある
中間KPI【目標】
2023年3月までに一つ以上の添付書類の電子化を実現する
【KPIの定義】
関係機関とのシステム連携により削減を図る書類
アクションプランa
【取組内容】
商業・法人登記簿謄(抄)本などOSS対象手続きの添付書類の電子化を進める
【取組期限(期間)】検討:2021年3月実施:2026年3月
アクションプランaについてのコメント
添付書類が電子化されることで、完全な電子申請が可能になるのは素晴らしいと思います。
現状は、印鑑証明書と委任状は紙で提出するハイブリッドOSSが主流というか、99%以上はハイブリッドOSS申請になっています。まだまだ、電子証明書を使った申請は一般的ではないと思われます。
印鑑証明書の電子化は完了しているのに、それが利用されていないという現状の課題と解決を図らない中で、登記簿謄本の電子化をしたとしても利用率は向上されないはずです。印鑑証明書を紙で提出するのであれば、謄本を追加で紙で提出しても出頭や郵送の手間は大して変わらないからです。
もちろん、大手リース会社が委任状や印鑑証明書を電子化した場合に、使用者の法人の謄本や、個人の住民票が電子化されることにより便利になる可能性はあります。
ただ、昨年末の押印廃止による通達改正により、申請データに記名がある場合は(なお、100%記名はあります)使用者の委任状は添付不要となっているので、特に電子化をしなくても、謄本のスキャンデータを写しとして認めることで、所有者のリース会社が、委任状の電子化をすれば、特に電子的な謄本などなくても、スキャンデータで出頭の手間を減らすことが可能になります。
ただ、住民票や登記簿謄本の有効期限切れの場合に、国が最新情報をチェックして問題なければ受理してもらえるような仕組みが出来上がれば、OSSの利用率向上はともかく、国民の利便は向上するように思います。
結論として、利用率向上のために必要なのは、完全なOSSの申請のための、電子証明書の活用の促進です。具体的には、期限を定めて登録の手数料を半額にすればいいと思います。登録手数料が半額ならば、リース会社は委任状の電子化に踏み切る可能性があります。使用者の住所証明を画像データで受け取れば、制度的な課題はなく、完全OSSが普及することでしょう。
アクションプランb (書類の電子化および対象手続きの拡大)
【取組内容】
OSS対象となっていない手続きに必要となる書類について可能なものは電子化した上で、OSS対象手続きを拡大する
【取組期限(期間)】
検討:2022年3月実施:2026年3月
アクションプランb についてのコメント
手続きの対象外となっているものについては、電子化しなくても制度の対象とすることが可能です。例えば未成年の登録について、行政書士などの一括申請者は紙で追加で親権者の同意書を添付することで新車新規の申請の場合は、登録することが可能です。
しかし、なぜか移転登録の場合は、未成年の申請ができないことになっています。
電子化してないからできないのではなく、手続き範囲を広げる価値を理解してないから、手続き範囲が狭いままなのだと感じます。
利益相反のときも書きましたが、100件に1件できない申請(例えば相続手続き未了の車両の下取り)がある場合には、業務をOSSに移行することができないので、紙とOSSの両方の行うか、紙だけの申請をするかの2択になります。大量申請者であればあるほど、車庫証明の申請の移動時間の負担などのコストが一件あたりでは低くなるので、紙申請からOSS申請に移行するメリットが小さくなります。件数を伸ばしたいならば、大量案件をもっている業者が、例外なくOSS申請できるようにすることが最重要です。
したがって、まず、申請対象手続きを広げることが重要であって、書面の電子化は完全OSSの普及とともに別途検討していくべきであると思います。
オンライン利用率を引き上げる上での課題と課題解決のためのアクションプラン③
課題
マイナンバーカードを用いた申請や自動車OSSについての理解が浸透していない
中間KPI【目標】
2022年12月までにマイナンバーカード使用率を50%とする
【KPIの定義】
マイナンバーカード使用率
=OSS申請においてマイナンバーカードを使用した手続き件数/OSS申請件数
アクションプランa
【取組内容】
OSS申請率低迷地域の明確化を行った上でマイナンバーカードの優良事例の展開などOSS申請利用の働きかけを行う
【取組期限(期間)】2021年3月末
アクションプランaについてのコメント
そもそも、マイナンバーカードを使用したOSSが全く普及しなかったから、ハイブリッドOSSを使用して普及率を向上させた歴史を考えても、マイナンバーカードの利用はハードルが高いと思います。
マイナンバーカードの優良事例がそもそも何なのか、2021年3月末から2ヶ月経過しましたが、この働きかけは業界には全く伝わっていません。
アクションプランb
【取組内容】
OSS未対応3府県にOSS対象地域を拡大する
【取組期限(期間)】2023年3月末
アクションプランbについてのコメント
これは非常に素晴らしい取り組みです。マイナンバーカードの利用率向上との関連性はよくわかりませんが、未だに未対応地域があることは早急に是正すべきです。