清算中の会社における自動車登録手続き
自動車登録に慣れてくると、『解散の登記』=『清算結了についての理由書』と早合点してしまう方がいらっしゃいます。会社の解散により清算中となった会社の自動車登録手続き簡単に解説していきたいと思います。
目次
印鑑証明書が出るか出ないか
会社には大きく分けて2つのステージがあります。
印鑑証明書が発行できるステージと、発行できなくなるステージです。
発行できるステージであれば印鑑証明書を添付して登録することができます。
簡単に分類すると下記のようになります。
印鑑証明書が発行できるステージ
- 通常の会社 ⇨ 代表取締役の印鑑証明書を発行可能 (支配人も可)
- 解散中の会社 ⇨ (代表)清算人の印鑑証明書が発行可能
印鑑証明書が発行できなくなるステージ
- 解散後清算結了した会社 ⇨ 元清算人の印鑑証明書で登録できるケース有
- 解散後10年放置したケース ⇨ 不可
※ 清算行為を継続するには長すぎるので国が閉鎖することができます。
(商業登記規則81条1項による閉鎖)
- 最後にした登記の後12年放置して解散となったケース ⇨ 不可
株式会社の役員の任期は最長で10年なので、登記が12年間されてないというケースは会社の実態のない可能性が高いので解散したものとみなされますが、清算人は選任されないので印鑑証明書は発行されません。
(会社法第472 条第1項の規定により解散)
解散した会社(清算中の会社)のやるべきこと
解散を決めた会社は、直ちに消滅するわけではなく、事業を清算します。清算行為をする代表者は、代表取締役ではなく、(代表)清算人という肩書となり、印鑑証明書も代表清算人という肩書になります。代表清算人は借金があれば返済する必要がありますし、頼まれた仕事が残っているケースもあります。売掛金の回収ができてないかもしれないですし、資産があったら現金化する必要があります。
具体的には、債権者(会社に対して何かを請求できる人)に対して、個別に連絡して債務の履行(やるべきことをやる)をして、把握していない債権者のために、2ヶ月以上の期間をきめて、官報へ公告します。(この官報公告は、広く一般の人が見ているという建前になっているので、法律的な手続きで、直接相手に連絡できないときや、広く一般に情報提供しなければいけないときに使用します。)
清算行為では、債務の弁済(借金の返済や、やりかけの仕事の完結など)と、債権の取り立て、資産の処分をして、会社に最終的に余ったお金を決めます。余ったお金を残余財産といいます。残余財産は株主に分配されるので、最後に株主にお金を分配して清算行為が完了します。
この清算行為の完了をきちんとまとめて、清算の報告書を作成し、株主総会で承認してもらいます。
そこまでやって、清算結了の登記を申請します。
解散した会社(清算中の会社)と自動車の売却
清算中の会社の仕事の一つは、資産の現金化です。
株式会社は株主が保有するものなので、解散した会社のすべての財産は株主に最終的に分配されなければなりません。そのため、すべての資産を現金化します。
自動車も資産なので、清算中に必ず売却して現金化する必要があります。
注意しなければいけないのは誰に売って現金化するかです。
株主が複数いる場合
株主が複数いる場合は、それらの人に法律通りに分配する必要があるので、自動車は下取り業者に売却することをオススメします。
もし、代表者が会社所有の自動車に特別な思い入れがある場合などで、代表者が今後使用したいのであれば、適正な金額で代表者が買い取る必要があり、株主総会か、清算人会で承認してもらいます。移転登録をして代表者名義にします。
この際の登録手続きに必要な売主側の書類は、通常通り、会社の印鑑証明書、委任状、譲渡証明書、自動車検査証となります。
代表者がすべての株式を持っている場合
株式会社の代表者がすべての株式を保有している場合、株主を保護する必要がないので、利益相反取引とはならないと裁判所は判断しています。 (最高裁昭和45年8月20日)最終的な残余財産(清算後に残ったお金)の分配相手も自分なのでいくらであっても誰も困らないからです。
したがって、本来はいくらで取引しても問題は有りません。(債務超過などがない場合)
税法上のリスクもあるので、代表者個人に一定の金額で売却して登録することをおすすめします。(一度代表者個人のお金を会社に入れて、最終的に分配を受けてください。) なお、判例上は、代表者が一人ですべての株を保有していれば、利益相反とはなりませんが、自動車登録手続き上、株主名簿を添付して登録ということは認められていないので、株主総会議事録を添付することをおすすめします。
- 高級車をタダ同然で売却した場合は、税法上のリスクがありますのでそのような場合は、税理士にご相談ください。