自分でできる登録自動車の名義変更(所有権留保の解除)
目次
はじめに
自動車ローンで車を購入した場合、ローンを完済した際に所有権留保の解除という手続きが必要になります。
これは道路運送車両法第13条に定められており、手続きを怠った場合条文上は50万円以下の罰金が規定されています。
※自動車業界では、「所有権解除」とも呼ばれますが、このページでは所有権留保の解除と正確に表記します。
この手続きをやる選択肢としては下記の3通りのものが考えられます。
- 担当のディーラー営業マンに相談する。
- 行政書士に相談する。
- 自分で手続きする。
担当のディーラー営業マンに相談して、助けてもらうのが一番効率的だと思いますが、担当者が対応してくれない場合や、担当者がそもそもいない場合は、行政書士に依頼するか、自分でやることになります。このページでは、なるべくお金をかけないで自分で手続きする方法をお知らせします。
なお、山口事務所では全国の所有権留保の解除の手続きを、信販会社やディーラーの書類回収から代行しています。自分でやるのが難しい、時間がない方はぜひご利用ください。
必要書類(紙申請の場合)
基本的な所有権留保の解除を原因とした移転登録の必要書類は下記のとおりとなります。
- 車検証原本(有効期限のあるもの)
- 信販会社やディーラー等所有者の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
- 信販会社やディーラー等所有者の委任状(実印を押捺)
- 信販会社からディーラー等譲渡証明書(実印を押捺)
- 使用者の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)
- 使用者の実印(申請書に押捺、代理人に依頼するときには委任状に押捺)
- 移転登録申請書(OCR1号様式・運輸支局等で取得可能)
- 税申告書(運輸支局等の近隣(敷地内が大半)の自動車税事務所で取得可能)
- 手数料納付書(500円の登録印紙を貼付)
- 使用者が引っ越しなどをしている場合は、使用者の住所のつながりを確認できる住民票等が必要です。また、使用場所が変更になっている場合は、原則として車庫証明も必要となります。このページでは、使用者の情報に変更のないシンプルな所有権留保の解除について説明します。住所が変更になっている場合は、車庫証明の取得やナンバープレートの交換が必要となる場合がありますので、弊所にご相談いただければ幸いです。
車検証は現在A4サイズの紙のものと、A6サイズのカード化されたもの2パターンあります。A4サイズの場合は、有効期限や、所有者(または備考欄の車検証発行時の所有者)を確認することが可能です。A6サイズのものについては、使用者の住所、所有者の氏名、住所、有効期限の記載がないので、ICタグに格納されている自動車検査証記録事項をダウンロードするか、車検証交付時に交付された自動車検査証記録事項の用紙で内容を確認してください。
信販会社等所有者の委任状、印鑑証明書、譲渡証明書の取得方法については様々なパターンがあるので後述します。
使用者の印鑑証明書はマイナンバーがあればコンビニで交付できる自治体が多いですが、マイナンバーカードがある場合は、電子申請(後述)も可能です。また、マイナンバーカードを活用した申請を行政書士に依頼することも可能です。(ただし、所有者の書類を請求する時点で紙の印鑑証明書を求められるケースも多いです。)
信販会社、ディーラーの書類の取り付け
所有権留保解除の書類取り付けの方法
所有権留保の解除をするには、信販会社やディーラーに書類を送って信販会社やディーラーが発行した書類が必要です。ローン完済時に案内の書類がくることもありますが、手元になにもない場合の対処方法を記載します。
②その後、貰った書類と自分の書類を合わせて陸運局に持っていき名義の変更をします。
信販会社、ディーラーに送る書類
信販会社やディ-ラーにはどのような書類を送れば良いのでしょうか?
この質問には一概に答えられません。なぜなら信販会社やディーラーによって毎回必要書類が異なるためです。
例をあげると
A社の必要書類は ①車検証のコピー、②実印を押した委任状、③発行後3ヶ月以内の印鑑証明書、④自動車税の納税証明書
B社では ①車検証のコピー、②所有権解除依頼書、③免許証のコピー(②の上に貼付)、④ローンの完済証明書
C社では ①車検証のコピー、②残債照会依頼書、③免許証のコピー、④実印を押した委任状、⑤発行後3ヶ月以内の印鑑証明書
が必要になったりします。
さらに、委任状等には信販会社やディーラー独自の書式があったり、送り方もそのまま書類を送っても良い場合もあれば先にFAXをしてから郵送する場合、電話をしてから書類を送る場合、メール添付で送る場合など様々で
2状況によって追加になる書類
所有権留保の解除を申請する際の自分の状況によって必要書類が増える場合もあります。
例えば、引っ越している場合には住民票・住民票の除票・戸籍の附票などが必要になります。車検証の住所と現在の住民票上の住所までの経緯を繋げる必要があり、古い車で引っ越しが多くどうしても住所が追えない場合などは別途書類が必要になます。
結婚や離婚などで苗字が変わっている場合も同様で戸籍謄本などが必要になります。
また、これらの場合でも免許証の裏面でも良いというディーラーもあります。
法人の場合には商業登記簿が必要になります。
本来使っていた人が亡くなって相続があった場合などには遺産分割協議書なども必要になり、別途相続用の書式を用意しているディーラーも多くあります。
ローカルルール
ローカルルールとして特殊な書類が必要になる地域もあります。例えば石川県のディーラーでは発行後1週間以内の住民票が必要になる場合が多々あります。秋田県のディーラーでは書類を送る際に手数料として切手を別につけなければいけない場合があります。
県内用と県外用
ディーラーの発行する書類には同一の都道府県内でしか使えないものがあり、そのような場合、特に何も言わなければ県内用の書類が発行されます。
基本的に自分名義に変更する場合は県内用の書類が必要になりますが、県外のディーラーが所有者になっている場合や県外に引っ越している場合は県外用の書類が必要になります。そして、ディーラーによっては県内用と県外用で発行するためにそろえなければいけない書類が変わってくる場合もあります。
つまり、①そのディーラーが県内用と県外用を分けているかを確認、②自分はどちらが必要かを確認、③必要な書類を確認、④県外用が必要な場合はそれを前もって伝えておくという工程が必要になります。
書類の書き方
所有権留保の解除の委任状の書き方
誰かに申請を代わりにやって貰う場合には、委任状の作成が必要です。委任状については、決まった様式はありませんが、A4横のものが一般的です。また、車台番号または登録番号で車両を特定することが必要です。
下記の雛形を使った場合は、自動車のナンバープレートの番号、使用者の氏名住所を記載し、実印を押捺します。日付は記入した日付を入れてください。
なお、自分で申請する場合は、申請書の下段の新所有者欄に実印を押捺します。
信販会社の委任状も形式は様々なものがあります。日付欄がある場合で、発行日が書いていない場合は、送付状などの日付を記入してあれば受理されます。
実際に誰が行くのか不明な場合が多いので、受任者は空欄で発行されることがほとんどです。自分で行く場合は、自分の氏名住所を記入します。
登録番号、車台番号は埋まっているケースが多いと思いますが、埋まっていない場合は、使用できないので、車検証を見て、鉛筆で下書きした上で、ボールペンで記入することをおすすめします。
委任項目が空欄の委任状が交付される場合もありますが、そのときには「移転登録」と記載してください。
所有権留保の解除を原因とした移転登録申請書の書き方
記載例を参考に申請書を作成してください。後述の電子申請を活用する場合は、こちらの申請書は作成不要です。
上部の①業務種別は移転登録の3を入力します。
手数料、補助シート、番号指示、有効期限、出張、備考欄、処理、例外、制限解除、NOX-PM 証明書指示は、空欄で大丈夫です。
㉑の自動車登録番号にナンバープレートの文字を記入します。枠にかからないように注意が必要です。
㉒の車台番号は、下7桁を記載します。ハイフン以下が6桁の場合は「-123456」のようにハイフンから記載します。
所有者欄(57)氏名又は名称の下にある四角に所有権留保の解除を表す1を記入します。
氏名住所を記入する必要はありません。使用者欄以下のマスには記入は不要です。
なお、ここまでの記入は鉛筆で行います。
下部の申請人などの欄はボールペンで記入します。
新所有者、現所有者の欄に、名前と住所を記載します。自分で申請する場合は、印の部分に実印を押捺します。使用者の欄はどうように記載しても良いですが、「同上」でも受理されます。
旧所有者の欄には、印鑑証明書記載の住所氏名を記入します。
旧所有者からは委任状をもらっているので、申請書には押印不要です。
使用の本拠の位置(通常は使用者住所に同じ)も記入します。
原因は 「所有権留保の解除」となり、日付については窓口で確認してください。
法律的にはローンを完済した日になりますが、窓口の指示に従うことが安全です。
国土交通省のサイトでも申請書の作成、PDFのダウンロードが可能です。ご活用ください。
https://www.jidoushatouroku-portal.mlit.go.jp/jidousha/form/qa/SCOCR111010
登録車→登録番号の入力、車台番号下7桁入力 「次へ」
→はい(所有権留保の解除)→いいえ(変更なし) 「次へ」
→AタイプまたはBタイプ(自動車検査証記録事項で確認) 「次へ」
→Bタイプの場合は登録識別情報を「知っている(識別情報を入力)」「知らない」 「次へ」
→(新)所有者(あなた)の氏名住所を入力、旧所有者情報の入力
→ 「代理人が申請する」にチェックマーク、代理人か、自分の氏名住所を入力 ※
→ 登録の原因は【所有権留保の解除】
→ 日付はローン完済に日付
→ 申請先の運輸支局を選ぶ
→ 出頭する日を選ぶ 「確認画面へ」
→申請書を保存。(メールアドレスとパスワードを入力) 「申請書の作成終了」
→ 申請書が自動でダウンロードされます。
- 自分で行く場合も、旧所有者の代理人という立ち位置になるので、代理人欄は自分で行く場合にも入力してください。
譲渡証明書の記載方法
厳密には、すべての項目が埋まっているものを、信販会社交付すべきですが、多くの場合、譲渡年月日と、譲受人の欄(陸運太郎の欄)は、空欄で発行されます。
車名、型式、原動機の型式も埋まっていないことがあります。
車検証を確認して、転記していきましょう。
押印済みの書類ですので、鉛筆で下書きしてから、内容を確認し、問題がなければボールペンで清書することをおすすめします。
税申告書の書き方
税申告書については、基本的には下記の見本のような書面ですが、都道府県毎に記載方法が若干異なります。用紙自体も複写式となっており、事前準備が難しいです。
申請先に記載例があるので、そちらを確認しながら記入してください。
なお、申請前の車検証(記録事項)をコピーしておいて、旧所有者の氏名住所が書けるようにしておいてください。
手数料納付書の書き方
500円の登録印紙は、提出先の役所の周辺で購入できますが、この印紙を貼るための用紙が、申請書のセットの表紙のような取り扱いになります。
行政書士事務所の活用
手数料納付書、移転登録申請書、委任状、譲渡証明書や税申告書を作成するのが大変という場合は、申請先の敷地内または近隣にある行政書士事務所を利用することが可能です。大体2000円~4000円程度の報酬で、作成を代行してもらえると思います。
山口事務所では、全国対応で手続きをすべて代行することが可能です。
移転登録(車検証の書き換え・所有権留保の解除)の申請
必要書類が揃い、税申告書以外の準備ができたら、運輸支局か自動車検査登録事務所で手続きをします。土日の受付はしていないので、在職土日休みの場合は、有給を取って手続きをする必要があります。
※税申告書作成のために、書き換え前の自動車検査証記録事項を手元に持っておくか、PDFでダウンロードしておきましょう。写真で撮っていても良いです。
自動車には管轄というものがあり、使用場所が変わらなければナンバープレートの地域名で申請先を判断することができます。東京であれば、品川・世田谷ナンバーは、東京運輸支局、多摩ナンバーは多摩自動車検査登録事務所となります。
ご当地ナンバーの富士山と知床は、2つの管轄をまたがっているので、ナンバープレートでは管轄が判断できないので、ご注意ください。
運輸支局や自動車検査登録事務所の敷地には、ナンバープレートの販売を行っている民間業者と、税申告を受け付ける都道府県税事務所が原則として併設されています。
ナンバープレートの販売を行っている民間業者で、登録印紙の購入が可能ですので、まずは、印紙を買って、手数料納付書に貼付します。
次に、運輸支局等の登録窓口で、申請書を提出します。(番号札で管理されている場所が多いです。)
提出前に作成した書類は下記の順番でホチキスで止めます。
ホチキスで止めたものに、申請書を挟んで登録窓口に提出します。なお、行政書士に税申告書を作成してもらった場合は、登録手続き終了後に使用するので提出しないように気をつけてください。
関東の並べ方
- 手数料納付書
- 譲渡証明書
- 旧所有者の印鑑証明書
- 旧所有者の住所等のつながりを証明する書面
- 旧所有者の委任状
- 新所有者の印鑑証明書
- 新所有者の委任状(代理申請の場合)
- 自動車検査証
関東以外の並べ方
- 手数料納付書
- 自動車検査証
- 譲渡証明書
- 旧所有者の印鑑証明書
- 旧所有者の住所等のつながりを証明する書面
- 旧所有者の委任状
- 新所有者の印鑑証明書
- 新所有者の委任状(代理申請の場合)
登録審査が完了したら、新しい車検証(A6カード)と自動車検査証記録事項、登録事項等通知書を受け取ります。リコールに関する書類が出た場合は、ディーラーに状況を確認してください。
新しい車検証、登録事項等通知書、交付された自動車検査証記録事項、申請前の自動車検査証記録事項がわかるものをもって、税事務所に行き、複写式の申請用紙の記載例を確認しながら記入します。
税事務所の審査が完了したら終了です。
新しい車検証(A6カード)を忘れずに車に搭載しましょう。
行政書士の利用
ここにまで述べたように信販会社やディーラーから書類を貰うだけでも大変な時間と労力が必要になる上に、申請先は、平日の昼間しか空いておりません。
自分でやってみたい方は、ぜひチャレンジしてほしいと思いますが、ここまで読んで大変そうだと思った方は、行政書士にすべて依頼することも検討してください。
山口事務所なら日本全国300ヶ所以上のディーラー、20ヶ所以上のローン会社に対して所有権留保の解除書類の取得実績があり、各種イレギュラー案件にも十分な実績と経験があります。また、書類発行後の移転登録(名義変更)手続きもまとめて全国一律で対応可能となっております。所有権留保の解除書類の取り付けが大変だと感じた方は、弊所にご依頼ください。