【コラム】自動車OSSで利益相反取引に関する申請ができないと説明された件について【後日談有り】

2021-05-12

多摩自動車検査登録事務所前で、8年以上前から自動車OSSを利用し、申請実績15,000件以上の行政書士法人山口事務所、代表行政書士の山口幹夫です。

 

自動車ワンストップサービスは、まだまだ改良の余地がたくさんあるので、一つ一つ公開していきたいと思います。

今回は利益相反取引に関する申請ができないと説明された(令和3年5月27日追記)ことについてです。

(後日、申請できることが判明しました。)

 

制度設計の思想について思うこと

自動車OSSでは、複雑なものはできなくてもいいという制度設計がなされているように感じます。まるで、まだまだ申請率が1%しかないのだから、100件に1件のレアケースができなくても、申請率を上げることに支障はないと考えて作られているかのようです。 

OSSというのは、申請の順番が変わるという特徴があります。

紙申請は、車庫申請(警察)、車庫証明等受領(警察)、登録申請(陸事)と計3回出頭します。

OSS(ハイブリッド)は、窓口審査(陸事)車検証受領(陸事)車庫証明の控え等受領(警察)と計3回出頭します。2つの申請で当然業務手順は異なります。

ここで、できない申請というものがあると、やり方が複雑化し、OSSを使いにくくしています。

定期的に100台、200台の下取り車の申請をOSSでやろうとした場合、すべてがOSSになるから、警察への出頭の手間が減り、業務が効率化できるのです。 しかし、その中にできないものがあると、それを確認して、仕分けて、できないものだけ紙申請をするために別途車庫証明を申請しなければなりません。そんな状態では、OSSに移行する気にはならないのは当然だと思います。大量に申請する側の気持ちを考えていないという部分に改善の余地があります。

繰り返しになりますが、個人が申請するよりも、圧倒的に業者の申請が多い自動車登録業界において、業者が使いにくいOSSが普及するわけがありません。普及するためには、すべての申請ができるという状態にすることが重要です。

利益相反取引とは

会社の代表者が、会社所有の自動車を、自分個人に売却する場合が代表例です。

会社の代表者が、会社の自動車を不当に安く自分に譲り渡したら、株主の利益を損ねます。したがって、勝手にはできないように法律で規制されています。株式会社の場合は取締役会議事録や、株主総会議事録を添付することで、認めらます。

繰り返しになりますが、利益相反行為に該当した場合は、原則として登録できません。

ただし、利益相反行為であっても、法律に定められた手続きをすることで有効になります。登録のときにはその議事録を添付することになります。

たとえば、会社所有の自動車を100円で代表者に売った場合、通常であれば株主利益を損なうので無効となりますが、例外的に、株主総会で株主の同意が得られているならば問題ないということです。(取締役会のない会社の場合 なお、税法上のリスクは考慮してません。)

参考条文

会社法

(競業及び利益相反取引の制限)

356条 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。

一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。

二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。

三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。

2 民法第108条の規定は、前項の承認を受けた同項第2号又は第3号の取引については、適用しない。

(競業及び取締役会設置会社との取引等の制限)

365条 取締役会設置会社における第356条の規定の適用については、同条第1項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。

2 取締役会設置会社においては、第356条第1項各号の取引をした取締役は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。

 

 

利益相反取引があった場合の登録手続き

 

先程も簡単に触れましたが、OSSではなく、一般の書面による申請の場合、利益相反取引があった場合でも特別な書面を提出すれば申請は可能です。しかし、OSSになると、特別な書面を提出したとしても、登録をしてはならないというルールになっていると先日説明を受けました。(撤回されています。)(令和3年5月27日修正)

利益相反取引かどうか、利益相反取引に当たる場合は、例外的に承認をすることがわかる添付書面があるかないかは、紙の申請の場合は、譲渡証明書、委任状、印鑑証明書およびその他の添付書面で確認しています。ハイブリッドOSSの場合でも、同様の書類を受付審査時に確認すれば何の問題もないはずです。

マイナンバーや法人の電子証明書を利用した完全なOSSでは問題となりうるかもしれませんが、そもそも譲渡証明書の電子化が追いついてない状況で、その部分を考慮する必要があるとは思えません。

どうしても完全なOSSでは対応できなかったとしても、移転登録のOSS申請はハイブリッド方式なのですから、ハイブリッド方式に限っては認めるとすればいいはずです。

実際にハイブリッドOSSの移転登録で、利益相反取引に該当する場合でも受理されたケースもあります。つまり、利益相反取引であっても議事録などを確認して問題ないと判断されたら、システム上利益相反であることを理由に登録できないということはないということです。(そもそも利益相反かどうかを判定する機能がありません。)

認めるというだけでシステム改修無しで利益相反取引は申請できる様になるのです。

運用の変更だけで、OSSの使用できる手続きが増えるので、ぜひOSSの普及のために運用を変更してほしいと思いました。

※ 後日、説明が間違っていて、専門家向けの一括申請の場合は申請が可能だということがわかりました。

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