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変更登録と間違えやすい記載変更って何?
このページにアクセスいただきありがとうございます。
このページでは、登録自動車の手続きの一つである記載変更について、東京の多摩自動車検査登録事務所前で、半世紀以上代書窓口を経営している行政書士法人山口事務所が具体例も交えて、なるべくわかりやすく解説します。
記載変更とは
記載変更とは、登録を伴わない車検証の記載内容を変更する申請です。
委任状の委任項目は「検査証記入」、申請者は使用者となります。
(なお、押印廃止により、申請書に記名があれば委任状の提出は不要です。)
使用者の変更や、車のサイズなどの諸元の変更があります。
諸元の変更でも、構造変更検査を伴う場合と、伴わない場合があります。
使用者の変更
勘違いされやすいのですが、使用者の氏名と住所は登録事項ではないので、これらの項目だけが変更になった場合は、変更登録ではなく、記載変更となります。
使用者の住所氏名がかわった場合で、所有者の名前、住所、使用の本拠の位置の変更がなければ、記載変更となります。例外的に、使用の本拠の位置が同一の場所でも、使用者が別人人に変わった場合は、変更登録となります。(使用の本拠の位置の変更があったと解釈されているからですが、結論だけ覚えていればオーケーです。)
記載変更(使用者の変更)の具体例
リース車両や、所有権留保の車両で、使用者が法人の本社、使用の本拠が営業所のケースで、本店移転をしたが、同一の営業所で使用するケースが代表例です。
この場合は、所有者の情報と、使用の本拠の位置に変更がなく、使用者が同一人物なので、使用者の情報のみの変更で記載変更となります。
ローンを組んでいて所有権留保となっている車両の持ち主が結婚して苗字の変更をしたが、住所の変更がなかった場合も記載変更となります。
個人の場合は使用者の住所が使用の本拠となる場合が多いので、記載変更になるケースは氏名の変更が多いです。 結婚と同時に引っ越しをするケースでは、通常は、使用の本拠の位置も変更されるので変更登録となります。
記載変更(使用者の変更)必要書類
- 自動車検査証(限定自動車検査証が交付されている場合は限定自動車検査証)
- 手数料納付書 (手数料は無料)
- 検査証記入申請書 (申請書に記名があれば委任状は不要)
- 事由を証する書類(氏名、名称、住所の変更を証明する書面)
- 事業用自動車においては事業用連絡書
この4つ、または5つの書面が必要となります。
手数料納付書と検査証記入申請書は運輸支局等で取得可能です。自動車検査証は自動車に搭載されているはずです。(ない場合は再交付が必要です。)
したがって、事前準備が必要な書類は事業用自動車(緑ナンバーのトラック、バス、タクシー等)でなければ、実質的に氏名、名称、住所の変更を証明する書面となります。
事由を証する書類 (氏名、名称、住所の変更を証明する書類)とは
使用者が個人の場合で住所の変更の場合
発行されてから3ヶ月以内のものであって、住所のつながりが証明できる住民票。
住民票のみで住所のつながりが証明できない場合は、住所のつながりが証明できる「住民票の除票」、「戸籍の附票」も必要。
なお、この場合使用の本拠の位置に変更がないとする挙証書面(※1)が必要。ただし、現に使用者住所と使用の本拠の位置が異なる場合にあっては不要とする。(※2)
写し(コピー)でもよい。
使用者が個人の場合で氏名の変更の場合
発行されてから3ヶ月以内のものであって、氏名の変更の事実が証明できる戸籍謄(抄)本又は戸籍の全部(個人)事項証明書若しくは住民票
写し(コピー)でもよい。
使用者が法人の場合で住所の変更の場合
発行されてから3ヶ月以内のものであって、住所のつながりが証明できる商業登記簿謄(抄)本又は登記事項証明書(履歴事項証明書)。
登記簿謄(抄)本(履歴事項証明書)のみで住所のつながりが証明できない場合は、住所のつながりが証明できる閉鎖謄本(閉鎖事項証明書)も必要。
なお、この場合使用の本拠の位置に変更がないとする挙証書面(※1)が必要。ただし、現に使用者住所と使用の本拠の位置が異なる場合にあっては不要とする。(※2)
写し(コピー)でもよい。
使用者が法人の場合で名称の変更の場合
発行されてから3ヶ月以内のものであって、名称の変更の事実が証明できる 商業登記簿謄(抄)本又は登記事項証明書
写し(コピー)でもよい。
使用者の住所の変更の原因が住居表示の変更の場合
個人・・・市区町村の発行した住居表示の変更の証明書
法人・・・商業登記簿謄(抄)本又は登記事項証明書が原則です。市区町村の発行した住居表示の変更の証明書の添付でも受理されますが、登記の変更についての指導をされる可能性があります。
写し(コピー)でもよい。
使用者住所と使用の本拠の位置が同一の場合は、使用の本拠の位置も変更になるので変更登録になります。住居表示の変更で変更にならない場合は、もともと使用の本拠の位置と使用者の住所が異なっている場合に限られます。
※住居表示の実施とは、東京都日野市日野○○○○○という住所が、東京都日野市日野◯丁目○番地◯というような丁目番地の表記に変更になることです。市町村合併など異なり、個別の番地がどのような住所に変更されたのか、個別に証明する必要があります。
※1 使用の本拠の位置に変更がないとする挙証書面とはなにか。
住所が変更になった場合は、元の場所に使用の本拠となりうる拠点が残っているかどうかはわかりません。個人が引っ越した場合は、通常引越し前の住所で、車を使用するということはありません。法人の場合は、本店を変えたが、旧本店が営業所として残っているということはありえますが、必ずしも旧本店で営業を続けるわけではありません。
したがって、使用の本拠の位置に変更がない、つまり、もとの所在地で車両の管理を続けていることを証明する書類が必要となります。
証明する書類としては下記の書類を提出します。
使用者が個人の場合
・公的機関発行の事業証明書又は営業証明書、継続的に拠点があることが確認できる課税証明書、電気・都市ガス・水道・固定電話料金領収書のいずれか(発行されてから3ヶ月以内のもの、写し(コピー)可)
使用者が法人の場合
・商業登記簿謄(抄)本又は登記事項証明書若しくは印鑑(登録)証明書(本店以外で商業登記簿謄(抄)本又は登記事項証明書で証明できない場合、公的機関発行の事業証明書又は営業証明書、継続的に拠点があることが確認できる課税証明書、電気・都市ガス・水道・固定電話料金領収書のいずれか)(発行されてから3ヶ月以内のもの、写し(コピー)可)
※2 使用の本拠の位置の挙証書面がいらない場合
個人であれ、法人であれ、もともと使用者の住所と使用の本拠が別の場合には、使用の本拠の位置で継続して車両を使用することを証明する書面の提出は不要となります。
個人の場合、個人の住所以外で使用の本拠の位置が設定さている場合として、個人事業主が自宅以外で営業しているケースが考えられます。また、単身赴任で家族が住む家から一時的に離れて、仕事をしているケースも考えらます。その場合、住民票上の住所が変更になったとしても、個人事業のお店や単身赴任先が変更になる必然性はないですよね。したがって証明書類は不要となります。
法人の場合は、使用者が本店で、使用の本拠の位置が営業というケースが考えられます。その場合、本社が移転になったからと言って、営業所も移転になる必然性がありません。したがって、あえて改めて証明書類を提出する必要はありません。
車両の諸元等に変更がある場合
記載変更の申請は、登録事項に変更がないが、車検証記載事項の変更があったときに行います。型式又は原動機の型式が変更になると、変更登録になりますが、それを伴い場合は、記載変更になります。軽微な変更の場合は、構造変更検査が不要で、車検期間もそのままですが、構造変更検査が必要な場合は、検査を受け直す必要があります。
諸元等の変更については複雑なので、実際の改造や検査を行う整備工場等にお問い合わせください。
参考:自動車登録事項等実施要領
車庫不要地域の自動車登録と必要書類
このページではまず、車庫不要地域の場合に、車庫証明の代わりにどのような書類が必要になるのか、車庫不要地域はどこか、どのように判断されるのかを説明していきます。
車庫不要地域の自動車登録の必要書類 (個人の場合)
使用者が個人の場合は、原則として住民票の住所が使用の本拠となります。
使用の本拠の位置が提出する住民票や印鑑証明の住所と同一の場合は、追加書類は不要で、単純に車庫証明の提出が不要になるだけです。
例外的に、単身赴任や、個人商店など、自宅住所と車の使用場所(使用の本拠)が異なる場合には、その場所で本当に生活または営業しているかを確認する必要があるので、車庫証明が不要になる代わりに、使用の本拠の位置を証する書面が必要となります。
必要書類は下記のいずれかです。(発行されてから3ヶ月以内のもの、写しでよい)
- 公的機関発行の事業証明書又は営業証明書
- 継続的に拠点があることが確認できる課税証明書
- 公共料金領収書(電気、都市ガス、水道または固定電話)
車庫不要地域の自動車登録の必要書類 (法人の場合)
法人の場合でも、使用者住所が証明されていて、使用の本拠の位置が使用者住所と同じ場合は、個人の場合と同様に追加の必要書類はありません。法人の場合は、使用者を支店や営業所にして、使用の本拠を同一とするというケースもあります。
法人の場合は、個人と比較して使用者の住所と使用の本拠の位置が異なることも少なくありません。
所有者を本店、使用者を支店、使用の本拠を営業所とするケースもありますし、
所有者および使用者が本店、使用の本拠が支店や営業所のケースもあります。
そのような場合は、使用の本拠の位置の挙証書面が必要となります。
必要書類は下記のいずれかです。(発行されてから3ヶ月以内のもの、写しでよい)
- 商業登記簿謄(抄)本又は登記事項証明書
- 印鑑(登録)証明書
- 公的機関発行の事業証明書又は営業証明書
- 継続的に拠点があることが確認できる課税証明書
- 公共料金領収書(電気、都市ガス、水道または固定電話)
登録自動車の車庫不要地域
車庫不要地域では、車庫証明(新規登録、移転登録、変更登録時に原則必要)と車庫の届出(保管場所の変更)が不要になります。
車庫不要地域は、「使用の本拠の位置」が平成12年6月1日の段階で下記の表以外の村だった地域となります。
※登録自動車で車庫証明が必要な村
都道府県名 | 郡名 | 村名 |
青森県 | 南津軽郡 | 田舎館村 |
岩手県 | 岩手郡 | 滝沢村 |
宮城県 | 黒川郡 | 大衡村 |
福島県 | 北会津郡 | 北会津村 |
河沼郡 | 湯川村 | |
茨城県 | 那珂郡 | 東海村 |
新治郡 | 新治村 | |
筑波郡 | 谷和原村 | |
埼玉県 | 大里郡 | 大里村 |
北埼玉郡 | 南河原村 川里村 | |
千葉県 | 印旛郡 | 印旛村 本埜村 |
富山県 | 中新川郡 | 舟橋村 |
射水郡 | 下村 | |
静岡県 | 磐田郡 | 豊岡村 |
愛知県 | 海部郡 | 十四山村 飛島村 立田村 八開村 |
大阪府 | 南河内郡 | 千早赤阪村 |
奈良県 | 山辺郡 | 都祁村 |
高市郡 | 明日香村 | |
鳥取県 | 西伯郡 | 日吉津村 |
岡山県 | 都窪郡 | 山手村 清音村 |
愛媛県 | 越智郡 | 朝倉村 |
沖縄県 | 中頭郡 | 北中城村 中城村 |
島尻郡 | 豊見城村 大里村 |
東京の場合は、島嶼部を除けば西多摩郡檜原村だけが車庫不要地域に該当します。
島嶼部では、大島町、八丈町は町なので車庫証明が必要で、利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、青ヶ島村、小笠原村は、村なので車庫証明が不要です。
気をつけなければならないのは、あくまでも基準が平成12年6月1日ということで、市町村合併などにより、平成12年6月1日時点では、村だったが現在は市になっている地域もあり、市の一部は車庫証明が不要で、市の一部は車庫証明が不要という地域もあります。
例えば、埼玉県児玉郡神川町は、平成18年に(旧)神川町と神泉村が合併してできた地域なので、平成12年6月1日時点で、神泉村だった地域は、現在は新川町ですが車庫証明は不要となっています。判断が、現在が村かどうかではなく、平成12年6月1日時点で村かどうかなので注意が必要です。
軽自動車の車庫不要地域の必要書類
軽自動車でも車庫不要地域がありますが、軽自動車の申請をするときには使用の本拠の市に関する証明書類は一切不要です。
軽自動車の場合は、車庫証明はそもそもありませんが、保管場所についての届け出をします。しかし保管場所の届出書は、軽自動車の新規検査や車検証記入申請(名義変更)の際に提出を要求されていないので、車庫に関する届け出が不要の地域であったとしても、軽自動車の申請時に別途書類が必要になることはありません。
軽自動車の車庫不要地域
軽自動車の車庫不要地域は、登録自動車と同じく、平成12年6月1日時点で判断します。
軽自動車の場合には、車庫の届出が必要なのは、特別区と下記の表の市となり、村と表に載っていない市は、車庫の届出が不要となります。
東京の場合は、表に載っていない福生市、武蔵村山市、あきる野市、羽村市と、町と村で構成されている西多摩郡が車庫の届出不要地域となります。
※軽自動車で車庫の届出が必要な市
都道府県名 | 市名 |
北海道 | 札幌市 函館市 小樽市 旭川市 室蘭市 釧路市 帯広市 北見市 苫小牧市 江別市 |
青森県 | 青森市 弘前市 八戸市 |
岩手県 | 盛岡市 |
宮城県 | 仙台市 石巻市 |
秋田県 | 秋田市 |
山形県 | 山形市 鶴岡市 酒田市 |
福島県 | 福島市 会津若松市 郡山市 いわき市 |
茨城県 | 水戸市 日立市 土浦市 つくば市 ひたちなか市 |
栃木県 | 宇都宮市 足利市 小山市 |
群馬県 | 前橋市 高崎市 桐生市 伊勢崎市 太田市 |
埼玉県 | 川越市 熊谷市 川口市 浦和市 大宮市 所沢市 岩槻市 春日部市 狭山市 深谷市 上尾市 与野市 草加市 越谷市 蕨市 戸田市 入間市 鳩ケ谷市 朝霞市 志木市 和光市 新座市 八潮市 富士見市 上福岡市 三郷市 |
千葉県 | 千葉市 市川市 船橋市 木更津市 松戸市 野田市 佐倉市 習志野市 柏市 市原市 流山市 八千代市 我孫子市 鎌ケ谷市 浦安市 |
東京都 | 八王子市 立川市 武蔵野市 三鷹市 青梅市 府中市 昭島市 調布市 町田市 小金井市 小平市 日野市 東村山市 国分寺市 国立市 田無市 保谷市 狛江市 東大和市 清瀬市 東久留米市 多摩市 稲城市 |
神奈川県 | 横浜市 川崎市 横須賀市 平塚市 鎌倉市 藤沢市 小田原市 茅ケ崎市 相模原市 秦野市 厚木市 大和市 海老名市 座間市 |
新潟県 | 新潟市 長岡市 上越市 |
富山県 | 富山市 高岡市 |
石川県 | 金沢市 小松市 |
福井県 | 福井市 |
山梨県 | 甲府市 |
長野県 | 長野市 松本市 上田市 飯田市 |
岐阜県 | 岐阜市 大垣市 多治見市 各務原市 |
静岡県 | 静岡市 浜松市 沼津市 清水市 三島市 富士宮市 富士市 焼津市 藤枝市 |
愛知県 | 名古屋市 豊橋市 岡崎市 一宮市 瀬戸市 半田市 春日井市 豊川市 刈谷市 豊田市 安城市 小牧市 |
三重県 | 津市 四日市市 伊勢市 松阪市 桑名市 鈴鹿市 |
滋賀県 | 大津市 彦根市 草津市 |
京都府 | 京都市 宇治市 長岡京市 |
大阪府 | 大阪市 堺市 岸和田市 豊中市 池田市 吹田市 泉大津市 高槻市 守口市 枚方市 茨木市 八尾市 富田林市 寝屋川市 河内長野市 松原市 大東市 和泉市 箕面市 柏原市 羽曳野市 門真市 摂津市 高石市 藤井寺市 東大阪市 四條畷市 交野市 大阪狭山市 |
兵庫県 | 神戸市 姫路市 尼崎市 明石市 西宮市 芦屋市 伊丹市 加古川市 宝塚市 川西市 |
奈良県 | 奈良市 大和高田市 橿原市 生駒市 |
和歌山県 | 和歌山市 |
鳥取県 | 鳥取市 米子市 |
島根県 | 松江市 |
岡山県 | 岡山市 倉敷市 |
広島県 | 広島市 呉市 福山市 東広島市 |
山口県 | 下関市 宇部市 山口市 徳山市 防府市 岩国市 |
徳島県 | 徳島市 |
香川県 | 高松市 |
愛媛県 | 松山市 今治市 新居浜市 |
高知県 | 高知市 |
福岡県 | 北九州市 福岡市 大牟田市 久留米市 |
佐賀県 | 佐賀市 |
長崎県 | 長崎市 佐世保市 |
熊本県 | 熊本市 八代市 |
大分県 | 大分市 別府市 |
宮崎県 | 宮崎市 都城市 延岡市 |
鹿児島県 | 鹿児島市 |
沖縄県 | 那覇市 沖縄市 |
支配人による自動車登録
株式会社には、法律的に「支配人」と呼ばれる役職の人がいるケースがあります。
支配人とは何か
法律上の株式会社の支配人の権限は、
(支配人の代理権)第十一条 支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。2 支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。
3 支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
支配人の印鑑証明書提出時の注意点
(f)所有者の印鑑(登録)証明書
① 発行されてから3ヶ月以内のもの
② 申請人(所有者)が支配人による申請の場合は本社の所在証明として商業登記簿謄(抄)本又は登記事項証明書を添付
引用元:自動車登録業務等実施要領 I 1-1(1)(f)
登記事項証明書の添付が不要な場合
支配人の印鑑証明書を提出しない場合は、登記事項証明書は不要です。新規登録前の権限の移動を証明する譲渡証明書に支配人の名前があったとしても、そもそも印鑑証明書を添付したいので、登記事項証明書は提出する必要がありません。
(d)譲渡証明書(所有者の変更がある場合に限り必要)
① 譲渡人は実印を押印
② 譲渡人が支配人・清算人等であっても資格証明書は不要
引用元:自動車登録業務棟実施要領 I 1-1(1)(d)
遺贈による自動車の名義変更(移転登録)
遺贈による自動車の名義変更
自動車の名義変更の中でもレアなものが、「遺贈」による名義変更です。当法人での過去の実績でも、相続100件に対して、遺贈は1件あるかないかです。
遺言書があるから、相続だと思いこんで書類を集めると、車を持ち込んだものの登録ができないなんてこともありえます。
遺言書があった場合は専門家に相談することをおすすめしています。
行政書士法人山口事務所は、遺言についての申請も全国の行政書士と連携して対応いたします。どこの管轄の車両であってもご相談ください。
遺贈と相続の判断
「相続させる」と書いてあっても、相手が相続人でなかった場合は、遺贈になります。公正証書の場合は、戸籍を添付するので、基本的に公証人が修正すると思いますが、自筆証書遺言の場合は、勘違いでこのような記載をされる場合もあるので注意が必要です。
遺言書に「遺贈する」と書いてあった場合は、基本的に遺贈になります。例外的に相続人全員に対して、「遺贈する」と書かれていた場合は、相続による申請をするものと思われます。※1
遺贈と遺言執行者
遺贈による移転登録の必要書類は遺言執行者がいるかどうかで変わります。※2
遺言執行者がいない場合は、書類がかなり多くなります。公正証書遺言で遺贈をする定めをしているケースでは、多くの場合遺言執行者についての定めがあるので、遺言執行者の有無を確認しましょう。
遺言執行者がいる場合の遺贈の必要書類
受贈者が所有者兼使用者の場合
- 自動車検査証 (有効期限内のもの)
- 公正証書遺言 (または検認済みの自筆証書遺言)
- 死亡の事実のわかる戸籍
- 遺言執行者の印鑑証明書 (発行後3ヶ月以内)
- 遺言執行者の委任状 (実印を押印)
- 受贈者(遺贈を受ける人)の印鑑証明書 (発行後3ヶ月以内)
- 受贈者の委任状 (実印を押印)
- 受贈者の車庫証明 (発行後概ね30日以内のもの、使用の本拠の位置が変わる場合)
- 管轄が変わる場合はナンバープレート (現車の持ち込みか、出張封印)
使用者が別の場合
- 自動車検査証 (有効期限内のもの)
- 公正証書遺言 (または検認済みの自筆証書遺言)
- 死亡の事実のわかる戸籍
- 遺言執行者の印鑑証明書 (発行後3ヶ月以内)
- 遺言執行者の委任状 (実印を押印)
- 受贈者(遺贈を受ける人)の印鑑証明書 (発行後3ヶ月以内)
- 受贈者の委任状 (実印を押印)
- 使用者の住所のわかる書類 (住民票等、コピー可、発行後3ヶ月以内)
- 使用者の委任状 (認印でも可)
- 使用者の車庫証明 (発行後概ね30日以内のもの、使用の本拠の位置が変わる場合)
- 管轄が変わる場合はナンバープレート (現車の持ち込みか、出張封印)
その車をディーラーに売却する場合
- 自動車検査証
- 公正証書遺言 (または検認済みの自筆証書遺言)
- 死亡の事実のわかる戸籍
- 遺言執行者の印鑑証明書 (発行後3ヶ月以内)
- 遺言執行者の委任状 (実印を押印)
- 受贈者(遺贈を受ける人)の印鑑証明書 (発行後3ヶ月以内)
- 受贈者の委任状 (実印を押印)
- 譲渡証明書 (受贈者の実印を押印)
- ディーラーの下取り用の書類
遺言執行者と受遺者が同一人物の場合
遺言執行者と受遺者が同一人物でも、特別な許可は不要です。また、印鑑証明書は同一人物なので一通で足ります。しかし、委任状は、遺言執行者としての立場と、受遺者の立場のものがそれぞれ必要となります。(1枚に2か所記名押印してもよいし、2枚でもよい。)
遺言執行者がいない場合の遺贈の必要書類
受贈者が所有者兼使用者の場合
- 自動車検査証 (有効期限内のもの)
- 公正証書遺言 (または検認済みの自筆証書遺言)
- 死亡の事実のわかる戸籍
- 被相続人と、相続人全員の関係がすべて証明できる戸籍
- 相続人全員の印鑑証明書 (発行後3ヶ月以内)
- 相続人全員の委任状 (実印を押印)
- 受贈者(遺贈を受ける人)の印鑑証明書 (発行後3ヶ月以内)
- 受贈者の委任状 (実印を押印)
- 受贈者の車庫証明 (発行後概ね30日以内のもの、使用の本拠の位置が変わる場合)
- 管轄が変わる場合はナンバープレート (現車の持ち込みか、出張封印)
使用者が別の場合
- 自動車検査証 (有効期限内のもの)
- 公正証書遺言 (または検認済みの自筆証書遺言)
- 死亡の事実のわかる戸籍
- 被相続人と、相続人全員の関係がすべて証明できる戸籍
- 相続人全員の印鑑証明書 (発行後3ヶ月以内)
- 相続人全員の委任状 (実印を押印)
- 受贈者(遺贈を受ける人)の印鑑証明書 (発行後3ヶ月以内)
- 受贈者の委任状 (実印を押印)
- 使用者の住所のわかる書類 (住民票等、コピー可、発行後3ヶ月以内)
- 使用者の委任状 (認印でも可)
- 使用者の車庫証明 (発行後概ね30日以内のもの、使用の本拠の位置が変わる場合)
- 管轄が変わる場合はナンバープレート (現車の持ち込みか、出張封印)
その車をディーラーに売却する場合
- 自動車検査証
- 公正証書遺言 (または検認済みの自筆証書遺言)
- 死亡の事実のわかる戸籍
- 被相続人と、相続人全員の関係がすべて証明できる戸籍
- 相続人全員の印鑑証明書 (発行後3ヶ月以内)
- 相続人全員の委任状 (実印を押印)
- 受贈者(遺贈を受ける人)の印鑑証明書 (発行後3ヶ月以内)
- 受贈者の委任状 (実印を押印)
- 譲渡証明書 (受贈者の実印を押印)
- ディーラーの下取り用の書類
遺贈と自動車登録取得税
相続の場合は、自動車取得税は非課税となります。※3
しかしながら、遺贈の場合は自動車取得税が課税されます。
自動車取得税は、自動車の取得価格課税されるものですが、遺贈の場合は対価がないことが一般的なので、その場合は、通常の取引価格というもので計算されます。※4
通常の取引価格は、自動車の型式指定番号と類別区分番号、初年度登録年月、自家用自動車か、事業用自動車(緑のナンバー)を税事務所に伝えることで教えてもらえます。(さらに細かいグレードが必要なケースもあります。)
一般的な自家用車であれば、登録から3年から5年で自動車取得税はかからなくなります。
ディーラーが下取りする場合
ディーラーが下取りする場合は、遺贈による取得でも東京などの一部の都道府県では自動車取得税がかかりません。これは、連件申請、いわゆるW移転の場合は、地方税法施行令第42条の2の「運用の用に供する自動車」に該当しないと考えるからです。※5
※1
(質疑)
(略)
どのような記載があれば「相続する場合」と判断してよいか。(回答内容)
「◯◯に遺贈する」等、相続か遺贈か判断できない場合は、(略) ◯◯が相続人か否かを判断するため戸籍謄本を求める。結果◯◯が相続人以外であれば遺贈となる。
引用元:自動車登録業務関係質疑応答集 平成24年3月 【9-25】
不動産登記に関する先例だが自動車登録の質疑の前提となる知識と思われるもの
(照会)
被相続人が相続人に対し相続財産の全部を包括名義で贈与する旨の遺言があるときは、その遺言書に他に相続分の指定と解せられる記載がない限り、その相続財産全部の処分を受ける者が相続人中の一部の者であると全員であるとに拘らず、当該処分による所有権移転登記の登記原因は遺贈であると考えられるので、本件の場合は遺贈による所有権移転登記を申請しなければならないものと考えるかどうか。
(回答)
相続財産の処分を受ける者が相続人中の一部の者である場合には、貴見のとおり。なお、その処分を受ける者が相続人の全員である場合には、その所有権移転の登記は、相続を登記原因としてなすべきである。
引用元:昭和38年11月20日民事甲第3119号回答
※2
(質疑)
遺言書による移転登録で、相続人以外に遺贈された場合の必要な戸籍謄本等と、その手続について
(回答内容)
- 遺言執行者が指定されている揚合(家庭裁判所による選任も含む)は、被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本等のみ。
→遺言執行者が登録義務者、受遺者が登録権利者の共同申請。
- 遺言執行者が指定されていない場合は、被相続人の死亡が確認でき、且つ被相続人と相続人全員の関係が全て証明できるものが必要。
→相続人全員が登録義務者、受遺者が登録権利者の共同申請。
引用元:自動車登録業務関係質疑応答集 平成24年3月 【9-25】
※3
(自動車取得税の非課税)
地方税法第百十五条 道府県は、国、非課税独立行政法人、国立大学法人等及び日本年金機構並びに都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区、合併特例区及び地方独立行政法人の自動車の取得に対しては、自動車取得税を課することができない。ただし、地方公営企業法(昭和二十七年法律第二百九十二号)第二条第一項に規定する地方公営企業の用に供するための自動車の取得のうち政令で定めるもの及び地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二十一条第三号に掲げる業務の用に供するための自動車の取得のうち政令で定めるものに対しては、この限りでない。
2 道府県は、次に掲げる自動車の取得に対しては、自動車取得税を課することができない。
一 相続(被相続人から相続人に対してされた遺贈を含む。)に基づく自動車の取得
(2号以降省略)
※4
(自動車取得税の課税標準)
地方税法第百十八条 自動車取得税の課税標準は、自動車の取得価額とする。
2 次に掲げる自動車の取得については、その取得の時における当該自動車の通常の取引価額として総務省令で定めるところにより算定した金額を前項の取得価額とみなす。
一 無償でされた自動車の取得又は自動車を譲渡した者が親族その他当該自動車を取得した者と特殊の関係のある者で政令で定めるものである場合その他特別の事情がある場合における自動車の取得で政令で定めるもの
(2号以降省略)
※5
(自動車取得税の納税義務者等)
地方税法第百十三条 自動車取得税は、自動車の取得に対し、当該自動車の主たる定置場所在の道府県において、当該自動車の取得者に課する。
2 前項の「自動車」とは、道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第二条第二項に規定する自動車(自動車に付加して一体となつている物として政令で定めるものを含む。)をいい、同法第三条の大型特殊自動車及び小型特殊自動車並びに同条の小型自動車及び軽自動車のうち二輪のもの(側車付二輪自動車を含む。)を除くものとし、前項の「自動車の取得」には、自動車製造業者の製造による自動車の取得、自動車販売業者の販売のための自動車の取得その他政令で定める自動車の取得を含まないものとする。(法第百十三条第二項の自動車の取得)
地方税法施行令第四十二条の二 法第百十三条第二項に規定する政令で定める自動車の取得は、道路(道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第二条第六項に規定する道路をいう。)以外の場所のみにおいてその用い方に従い用いられる自動車その他運行(法第百十四条第三項に規定する運行をいう。)の用に供されない自動車の取得とする。